PRESSRELEASE プレスリリース

第24098号

エネルギー消費量の低減(=航続距離延伸)につながるEVの“熱”管理
EVサーマルマネジメントシステム・関連部材の世界市場を調査
― 2030年市場予測(2023年比) ―
■EVサーマルマネジメント関連部材 3兆6,825億円(2.8倍)
EVの生産台数増加・普及に伴い、拡大

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、エネルギー消費量の低減、省スペース化・軽量化などを目的に統合化が進むEVサーマルマネジメントシステムと、システム構成の変化により需要変動が想定される関連部材の世界市場を調査した。その結果を「2024年 EVサーマルマネジメントと構成部材市場の将来展望」にまとめた。

この調査では、冷却・加温部材12品目、放熱部材6品目、断熱材・遮熱材・蓄熱材5品目といったEVサーマルマネジメント関連部材計23品に加え、EVサーマルマネジメントシステム2品目の市場の現状と今後の展望を明らかにした。なお、市場予測の前提となるEV市場については、10月18日に発表したEV新車販売台数をベースとした。

◆調査結果の概要

■EVサーマルマネジメント関連部材の世界市場

EVサーマルマネジメント関連部材の世界市場

冷却・加温部材は、電動コンプレッサー、バッテリー冷却プレート、電動ウォーターポンプ・電動オイルポンプなどがけん引している。搭載数はそれぞれ異なるものの、EVの伸びに近い形での推移が予想される品目が多い。電動ウォーターポンプ・電動オイルポンプや空調ダクトなどを中心に、モジュール化や軽量化に対応する製品の需要が増えるとみられる。環境配慮の観点から、エアコン冷媒はGWP値の低いR1234yfの採用が増えるとみられる。

放熱部材は、車載電装デバイスなどの発熱量増加やEVの普及に伴い、高熱伝導品を中心に拡大が予想される。放熱ギャップフィラーが市場の大半を占めており、放熱シートからの切り替えが進んでいくことで伸びていき、今後も市場の拡大をけん引するとみられる。

断熱材・遮熱材・蓄熱材は、現状は採用率が低いため市場は限定的であるが、航続距離延伸を目指し、電費向上を目的に遮熱性や断熱性に対するニーズが高まっていることや、断熱や遮熱は車内の快適性向上につながることから、今後も市場が拡大していくとみられる。

EVの普及に伴い、2030年の市場は2023年比2.8倍の3兆6,825億円が予測される。EVサーマルマネジメントシステムの統合化が活発になっており、システム構成の変化に伴った需要変動が想定されるほか、冷却方式や冷媒の変更により部材の需要も変化するとみられる。

■EVサーマルマネジメントシステムの世界市場

EVサーマルマネジメントシステムの世界市場

バッテリー冷却システムとエアコンシステムを対象とする。

多くの電力エネルギーを消費するバッテリーやモーターなどの冷却システム、エアコンシステムは、EVの航続距離延伸を実現するためにエネルギー消費量の低減が必須である。また、省スペース化・軽量化などもエネルギー消費量の低減につながることから、システムの統合化が進展している。

バッテリー冷却システムは、EVの普及に伴い、大幅な伸びが予想される。冷却方式は空冷、水冷、冷媒直冷などがあり、水冷が市場をけん引していくとみられる。また、冷媒直冷は安全性や冷却効率などの課題により採用は限定的であるものの、高機能な冷却システムへの需要の高まりに伴い、採用増加が期待される。
このほかにも、バッテリー冷却液の冷却水から冷却油への切り替えや液浸冷却の採用検討、バッテリー冷却プレートにおける大型化の進展などにより、システム構成が大きく変化する可能性もある。

エアコンシステムは、ヒートポンプが主流であるものの、中国ではPTCヒーターの採用も依然として多い。また、ヒートポンプは寒冷地など低温外気環境下では使用が難しいことから、PTCヒーターとの併用も増えていき、ヒートポンプとPTCヒーターともに伸びが予想される。

◆注目市場

●EV向け電動ウォーターポンプ・電動オイルポンプ

EV向け電動ウォーターポンプ・電動オイルポンプ

電気で駆動するウォーターポンプとオイルポンプを対象とする。

ウォーターポンプは冷却液を循環させるほかヒーターで温水を循環させる目的でも使用され、EV乗用車1台につき空調用、モーター・インバーター用、バッテリー用などで1個ずつ、計3個搭載されることが多く、EVの普及に伴い、中期的には順調な拡大が予想される。しかし、長期的には、ウォーターバブルで多方弁の採用増加によるウォーターポンプの搭載数の減少も考えられ、伸びの鈍化が想定される。
なお、ウォーターポンプおよびバルブやリザーバータンクなど、水冷システム周辺のモジュール化をポンプ・バルブメーカー各社が提案しており、モジュール化による配管数の削減、省スペース化・軽量化に寄与することから、サーマルマネジメントシステムの統合化が進んでいくとみられる。

オイルポンプは変速機などの油圧や潤滑性を維持する目的で使用され、駆動用モーターの冷却方式に油冷が採用された際に乗用車1台につき1から4個使用される。モーターの冷却方式で油冷が増えていることから、今後は堅調な伸びが予想される。オイルポンプにおいてもモジュール化が求められており、今後進展が期待される。

●EV向けエアコン冷媒

EV向けエアコン冷媒

EV向けカーエアコンの冷媒として使用される代替フロンのうち、フロン系と自然系のエアコン冷媒を対象とする。フロン系冷媒はR134aとR1234yfが使用されている。自然系冷媒ではCO2、プロパンが使用される。

EVの普及による市場拡大に加え、エアコンシステムとしては今後ヒートポンプの搭載が主流になっていくことでエアコン冷媒の需要も伸びるとみられる。
種類別では、日本や欧米ではGWP値の低いR1234yfへ、R134aから切り替えが進んでおり、今後も需要の中心になっていくとみられる。中国ではR134aが主に使用されているが、今後は政府が推進している自然系冷媒(CO2)への切り替えが進んでいくとみられる。また、欧州で現在検討されているPFAS規制がそのまま施行される場合、欧州でR1234yfが使用不可となることから、自然系冷媒への移行が進むとみられる。

冷媒メーカーはヒートポンプシステムに適合した製品の開発や、体積能力を上げることで電費効率を向上した冷媒など、新たなEV向けカーエアコン冷媒の開発も並行して進めている。

●EV向け電動コンプレッサー

EV向け電動コンプレッサー

エアコンに使用される冷媒を圧縮し液化するコンプレッサーのうち、電気で駆動するものを対象とする。

EVの普及による市場拡大が予想される。欧州でのPFAS規制の動向によっては、エアコン冷媒はフロン系冷媒から自然系冷媒へのシフトが想定されるため、冷媒の変更に対応した製品の開発が求められ、移行期間の終了が予想される2028年以降、自然系冷媒対応製品の市場が本格的に形成されるとみられる。

●EV向け放熱ギャップフィラー

EV向け放熱ギャップフィラー

有機系バインダーに高熱伝導性フィラーを高密度に充填した液状の放熱材料で、発熱体(半導体素子など)と放熱体(ヒートシンク、筐体など)との間に塗布し熱を伝播させるTIM(Thermal Interface Material)である。

液状のためディスペンサーでの自動塗布が可能であり、生産工程の自動化やシートで難しい複雑な形状にも対応できる。1台当たりの使用量は約2から5リットルとみられ、主に使用されるバッテリーではセルとモジュールの間やモジュールと冷却プレートの間などで、バッテリー以外ではECUやOBC(オンボードチャージャー)などで使用される。
今後もEVに搭載される電子部品の増加、LiDAR用ECUやOBC、ADAS関連などでの高熱伝導率品の採用増加により、市場は大きく拡大すると予想される。

●EV向けセラミックベース回路基板・金属ベース回路基板

EV向けセラミックベース回路基板・金属ベース回路基板

セラミックベース回路基板は、アルミナ(Al2O3、ZDA)、窒化アルミ(AlN)、窒化ケイ素(Si3N4)を基材とした回路基板、金属ベース回路基板は銅やアルミなどを基材とした回路基板を対象とする。

どちらもEVの普及やパワーモジュールの需要増加により市場が拡大している。セラミックベース回路基板は、海外自動車メーカーを中心に800Vの高電圧化対応によるSiCパワー半導体の搭載が加速することで、放熱性が高く機械的特性に優れる窒化ケイ素ベース回路基板の需要増加が予想される。
一方で窒化ケイ素ベース回路基板は銅とセラミックの線膨張係数の違いから、実装・モールド時の「反り」が問題となるため、ハンドリング性を重視するユーザーを中心に18W/m・K、20W/m・Kクラスの銅ベース回路基板の採用が検討されており、金属ベース回路基板も今後の伸びが期待される。

◆調査対象

システム
・バッテリー冷却システム
・エアコンシステム
冷却・加温部材
・バッテリー冷却プレート
・電動ウォーターポンプ・
 電動オイルポンプ
・バッテリー冷却液
・電動コンプレッサー
・バルブ
・ラジエーター
・PTCヒーター
・面状発熱体
・空調ダクト
・冷却配管用樹脂チューブ
・エアコン冷媒
・ヒーター電極用導電性ペースト
放熱部材
・放熱シート
・放熱ギャップフィラー
・放熱グリース
・放熱接着剤
・セラミックベース回路基板
・金属ベース回路基板
断熱材・遮熱材・蓄熱材
・断熱材(空調ダクト、天井等)
・合わせガラス用中間膜
・熱線遮蔽コーティング剤
・熱線遮蔽フィルム(透明)
・蓄熱材

2024/10/24
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