PRESSRELEASE プレスリリース
●ポリブチレンテレフタレート(PBT) 126.7万トン (26.4%増)
自動車電装部品の搭載点数の増加が需要増に寄与。用途拡大に向け機能性強化進む
●ポリフェニレンサルファイド(PPS) 18.3万トン (17.3%増)
SiCパワー半導体の採用が進み、自動車・電気電子など多分野でけん引
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、xEVや次世代通信関連で需要の伸びが予想され、また、環境配慮の観点からリサイクル製品やバイオマス製品への取り組みが進展しているエンプラ、およびその関連機器の世界市場を調査した。その結果を「2025年 エンプラ市場の展望とグローバル戦略 上巻」にまとめた。
この調査では、汎用エンプラ9品目、スーパーエンプラ11品目のエンプラ市場に加え、プラスチック造粒機・成形機5品目の市場動向を明らかにし、エンプラ産業を多面的に捉えた。
◆調査結果の概要
■エンプラの世界市場

エンプラは自動車、電気電子、産業機器などの様々な製品に利用されており、市場は経済成長、人口増加、自動車の電装化や軽量化などに伴い拡大してきた。2023年は不安定な経済情勢を背景として最終製品の需要が伸び悩み、ユーザーも在庫調整を進めたことで、汎用エンプラ、スーパーエンプラともに縮小した。
2024年はユーザーの在庫水準が正常化に向かっており、エンプラ市場は拡大するとみられる。2025年以降は景気変動による需要の波はあるものの、長期的には経済成長に伴い市場は拡大していくとみられる。また、欧州ELV規制案はまだ検討段階ではあるものの、再生プラスチックの利用が義務付けられる可能性もあることから、メーカーは対応グレードの開発・拡充を進めていくとみられる。
汎用エンプラでは、2023年は自動車分野や電気電子分野の需要が伸び悩み、ユーザーが在庫調整を行ったことから、PC、POM、PA6、PA66など市場規模の大きい品目の販売は軒並み低調だった。今後は世界の経済成長に伴い市場は拡大していき、特に汎用性が高いPCは新興国を中心に伸び、今後も安定した成長が続くとみられる。このほか、PBTはxEVや次世代通信関連で大幅な需要増加が予想され、市場の拡大をけん引するとみられる。
自動車分野が需要の中心であることから、エリア別にみると、中国、欧州、北米の比率が高い。中国では、近年数多くの現地メーカーの参入および生産能力の増強が行われており、国外メーカーにおいても中国拠点での能力増強を相次いで計画している。中国の経済成長にはやや陰りがみられるものの、依然として自動車や民生機器の需要は大きく、今後も市場をけん引するとみられる。なお、現状では北米より欧州の需要が大きいものの、堅調な自動車需要などを背景に、将来的には北米での需要が大きくなると予想される。
スーパーエンプラは、汎用エンプラに比べて物性面に優れ、あらゆる分野において需要が増加していたが、2023年は最も市場規模が大きいPPSをはじめ、多くの品目でユーザーが在庫調整を行なったため、販売は低調だった。今後は引き続きPPSが自動車電装部品向けを中心に成長し、市場拡大をけん引するとみられる。
エリア別では、汎用エンプラと同様、主な需要地は中国であるが、汎用エンプラと比較し、日本の比率が高い。技術力を要する付加価値製品は日本でも一定規模の需要を保っており、今後もスーパーエンプラの需要地として伸びるとみられる。
■プラスチック造粒機・成形機5品目の世界市場

造粒機は樹脂を固形化して出荷する際に用いられ、成形機は樹脂をユーザーが求める形に成形する上で必要不可欠な機器である。経済発展に伴うアプリケーションの需要増加によって、市場拡大が予想される。規模の大きい射出成型機や押出成形機は電気電子分野、自動車分野での設備投資に伴い、今後も需要が伸びていくとみられる。
このほか、大型造粒機はプラント新設時の導入が多く、中国における樹脂の内製化が追い風となり導入が増えている。射出ストレッチブロー成型機、押出ブロー成型機は消耗品や食品容器などの成形に用いられ、今後は東南アジアやインドなどの新興国における人口増加などを背景とした成長が予想される。
◆注目市場
●ポリブチレンテレフタレート(PBT)

電気特性に優れることからコネクターなど主に電装部品で使用される。2023年は前年に続き民生機器の市況悪化やコネクター向けで在庫調整がみられたが、同年後半から需要が回復に向かったことで、年間を通した販売は前年比増となった。
2024年は電気電子分野で低迷が続いているものの、自動車生産台数の増加などにより、市場は拡大するとみられる。今後は、自動車の電装化やxEVの進展に伴い、車載電装部品向けの増加が予想され、IoTの進展に伴う工場やデータセンター、新興国のインフラ向けの増加も期待される。
用途として最も多い自動車分野では、ワイヤハーネスコネクター、ECUケースなどで主に採用される。小型化によるコネクター1個当たりの使用量減少、ECU統合化の進展による使用量減少の可能性があるものの、どちらも電装化に伴う搭載点数の増加により需要は伸びるとみられる。電装部品以外では、ワイパー、ドアハンドルといった外装部品などに採用される。
自動車での採用を目指す競合樹脂は多いため、PBTの採用メリットである低コストを維持しながら誘電特性や耐衝撃性など機能性の強化が進むとみられる。
自動車以外では中国を中心に、家電、OA機器などのコネクターや周辺部品など電気電子分野のほか、光ファイバーケーブル被覆材向けが多い。被覆材向けは安価であることから、中国系メーカーの参入が中心である。
●超高分子量ポリエチレン(U-PE)

産業・繊維用途などにおいて底堅い需要を獲得しているほか、LiBセパレーター向けの増加が市場拡大をけん引しており、特にEVの需要が旺盛な中国での伸びが高い。
用途別では、優れた自己潤滑性、耐衝撃性、耐摩耗性、耐薬品性を有することから、ローラー、ギア、軸受けなどの産業機器分野の比率が高く、特に耐摩耗性に優れることから、ロボット部品向けが好調である。LiBや鉛蓄電池など電池セパレーター向けが市場の4割弱を占め、今後も高い伸びが予想される。
また、炭素繊維、アラミド繊維に続く高機能繊維であるU-PE繊維は、アラミドの代替素材かつ防弾素材として防弾チョッキや武器などの軍事用途を中心に徐々に採用が増えている。
成形方法別では、成形時に高圧力をかける押出成形や圧縮成形などを用いることが多く、LiBセパレーターで採用される押出成形の比率が上昇している。また、特殊で複雑な形状の成形には射出成形が用いられるものの、U-PEは粘度が高く、射出成形がしにくいこともあり、樹脂や成形機に対する要求が高くなっている。
●ポリフェニレンサルファイド(PPS)

2023年はユーザーが在庫調整を行った影響や、新規需要が伸び悩んだことから販売は低調だった。2024年は、日本や中国で自動車分野が低迷しており、市場はほぼ横ばいにとどまるとみられる。しかし、新たな引き合いは安定的に続いているため、2025年後半頃から需要は回復し市場が拡大するとみられる。
用途別では、電装部品や駆動系、冷却系部品などで使用される自動車分野が市場の半数以上を占める。なかでもパワーモジュールや冷却配管での需要が伸びている。特にSiCパワー半導体は電子機器や工作機械などで今後の伸びが予想され、新規開発案件も増加していることから、有望用途の一つになると期待される。
エリア別では、中国の比率が高く、中国におけるアンチダンピング関税の影響から中国系メーカーのシェアが高まっている。次いで規模が大きいのは日本であり、EVと比較して1台当たりのPPS使用量が多いHVの生産台数が多いことが要因である。また、生成AI普及に伴うサーバー関連の電気部品での需要増加も期待される。
●液晶ポリマー(LCP)

SMTコネクター向けが6割以上を占めており、市場はSMTコネクターの生産動向の影響を受けやすい。
2023年はユーザーの在庫調整の影響もあり販売は低調だったが、2024年に入って調整も一段落し、電気電子分野を中心に需要が回復しつつあることから、市場拡大が予想される。今後はスマートフォン用SMTコネクター向けに加えて、データセンターの新設に伴いサーバーで用いられるバックプレーン用SMTコネクター向けが増加するとみられ、LCPの主用途として市場をけん引すると期待される。
また、自動車分野では、コネクターやリレー向けが多い。耐熱性、寸法安定性、精密成形性を活かし、パワートレインやシャーシ、電装部品などで鋼、アルミニウム、汎用エンプラからの置き換えが図られている。
成形方法別では、射出成形が用いられることが多い。一方、フィルムや繊維には押出成形が用いられており、スマートフォンでのFPC基板の高周波対応ニーズを受けて押出成形グレードに対する需要が高まっている。
●押出成形機

シリンダー内で加熱融解させた樹脂を金型から押し出し冷却させることで成形する装置である。フィルム・シート製造装置、ラミネート装置などがある。
2023年まではEV関連が活況だったことからセパレーターフィルム製造装置を中心に好調だったが、2024年は中国における景気悪化、電気電子分野の設備投資の落ち込みにより市場は縮小するとみられる。今後は、EV関連の設備投資再開や、インドや東南アジアでの自動車・食品容器の需要増加による市場の拡大が予想される。一方、脱プラスチックに向けた、欧米を中心としたプラスチック使用量の減少が懸念される。
用途として最も多い自動車分野では、バッテリー用のセパレーターフィルム、コンデンサーフィルム向けなどがEV関連で増加している。生産性に対するユーザーの要求が高いが、押し出し速度を速くすると材料の表面に溶融損傷が発生するといった課題があり、高速生産技術の開発が進められている。また、電気電子分野では、民生機器用の汎用フィルムから光学分野の特殊フィルム、LCPフィルム、5G関連の機能性プラスチックなどアプリケーションの裾野が広い。
◆調査対象
汎用エンプラ・ポリカーボネート(PC)
・変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)
・ポリアセタール(POM)
・ポリアミド6(PA6)
・ポリアミド66(PA66)
・ポリブチレンテレフタレート(PBT)
・ガラス繊維強化ポリエチレンテレフタレート(GF-PET)
・超高分子量ポリエチレン(U-PE)
・シンジオタクチックポリスチレン(SPS)
スーパーエンプラ
・ポリアミド11・ポリアミド12(PA11・PA12)
・ポリアミド46(PA46)
・ポリアミド610・ポリアミド612(PA610・PA612)
・ポリアミドMXD6(PAMXD6)
・ポリアミド6T(PA6T)
・ポリアミド9T(PA9T)
・ポリアミド10T・ポリアミド 11T(PA10T・PA11T)
・ポリアリレート(PAR)
・ポリフェニレンサルファイド(PPS)
・液晶ポリマー(LCP)
・ポリアリルエーテルケトン(PAEK)
プラスチック造粒・成形機類
・大型造粒機
・射出成形機
・押出成形機
・射出ストレッチブロー成形機
・押出ブロー成形機
