PRESSRELEASE プレスリリース

第25062号

ポリウレタン関連(原料、中間製品、応用製品)の世界市場を調査
― 2030年予測(2024年比) ―
■ポリウレタン原料の世界市場 2,967万トン(19.4%増)
幅広い分野で使用されるためグローバルな経済成長に伴い拡大。環境対応も徐々に進む
●熱可塑性ポリウレタン(TPU) 113万トン(27.0%増)
自動車向け塗装保護フィルムでの需要増加がけん引

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、ポリオールとイソシアネートの組み合わせにより生成され、クッションや皮革、スパンデックスなど消費者に身近な製品や、断熱材や塗料、接着剤、エラストマーなどの工業製品に至るまで、幅広く用いられるポリウレタン関連の世界市場を調査した。その結果を「2025年 ポリウレタン原料・製品市場の現状と将来展望」にまとめた。

この調査では、ポリウレタンの原料であるポリオール9品目とイソシアネート11品目、そして、応用製品13品目の世界市場について、現状を捉え、将来を予想した。また、ポリオールとイソシアネートの原料、添加剤、中間製品の市場についても整理した。

◆調査結果の概要

●ポリウレタン原料の世界市場

ポリウレタン原料の世界市場

ポリウレタンは、ポリオールとイソシアネートの反応により生成される。2024年の市場は、ポリオールは前年比3.6%増の1,326万トン、イソシアネートは同3.5%増の1,158万トンとなった。ポリオールは断熱材をはじめ幅広い用途のポリウレタン製品で使用されるPPG(ポリプロピレングリコール)とPEP(ポリエステルポリオール)がけん引し、また、イソシアネートは市場規模の大きいMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)が建築物向けや断熱機器向けのポリウレタン製品で採用が増えるため、どちらも堅調な市場拡大が予想される。

ポリオールは、PPGとPEPが市場の大半を占めている。PPGはエーテル系、PEPはエステル系のポリオールとして汎用的に使用されており、ポリウレタン需要の増加に伴い、今後も伸長が期待される。ただし、中国での生産余剰などから価格が低下しているため、金額ベースでは2022年、2023年と比べると低い水準で推移するとみられる。今後の高成長が期待されるのはPTMG(ポリテトラメチレンエーテルグリコール)とPCD(ポリカーボネートジオール)で、PTMGはスパンデックス、PCDは皮革用コーティング材での需要が増えており、当面は年率3%以上の堅調な伸びが予想される。

ポリオールの需要は4割強が中国であり、特に汎用品であるPPGやPTMG、PEPの使用量が多い。欧州と北米は汎用品から特殊品まで幅広い需要があり、合わせて3割程度を占めている。日本はウレタン系塗料・コーティング剤で使われるPCL(ポリカプロラクトンポリオール)やPCD、ウレタン系接着剤・シーリング材で使われるPBP(ポリブタジエンポリオール)など特殊品の需要がある。

バイオマスポリオールの開発など環境対応が進んでおり、汎用的なPPGやPTMGのほか、PCDなどでも展開されている。ひまし油による植物原料由来ポリオールは耐水性や電気絶縁性、耐衝撃性、接着性、顔料分散性などが評価され一部のユーザー向けに供給されている。

イソシアネートは、市場の大半をMDIとTDI(トルエンジイソシアネート)が占めている。2024年は各国の経済成長やインフラ投資に伴う住宅着工数の増加によりMDIを軸に市場は拡大した。MDIは建築物や断熱機器向けなどの硬質ウレタンフォームで、TDIはインテリアや寝具向けなどの軟質ウレタンフォームで主に使用されている。MDIは各国の経済成長に伴う建設着工数の増加、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)など断熱効果の高い住宅の普及、中国経済の回復などにより、今後も安定した伸びが予想される。TDIは東南アジアなど新興国で伸びている一方、先進国などではクッション用途での快適性への要求からMDIへのシフトなどにより需要が減少している。その他、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)やIPDI(イソホロンジイソシアネート)などの塗料や接着剤向けイソシアネートは自動車生産台数の増加や、近年の環境規制に伴う水系塗料や接着剤向けのPUD(ポリウレタンディスパージョン)の増加により伸びるとみられる。PDI(1,5-ペンタメチレンジイソシアネート)は環境対応や機能性が評価され採用が増えており、大幅な伸びが期待される。

エリア別では、中国は住宅やビルなどが多く、断熱材を用いる冷蔵庫の生産台数も多いことから、MDIの需要が大きい。近年の経済不調に関わらずMDIの需要は堅調に伸びている。中国を除くアジア・パシフィックは、経済成長に伴う需要増加が予想される。欧州や北米では環境意識が高く、水系塗料や水系接着剤に用いられるPUDなどの原料となるHDIやIPDIの販売比率が他のエリアに比べて大きい。

環境意識の高まりを背景にバイオマス由来製品の発売などが進んでおり、大手メーカーが環境認証と非認証の原料を混合したマスバランス品をラインアップし、ユーザーの選択肢として提案している。また、植物由来のPDIは高反応性、低粘度により一定の需要がある。

●ポリウレタン製品の世界市場

ポリウレタン製品市場規模

フォーム製品は、硬質ウレタンフォームと軟質ウレタンフォームに大別される。建築用途の断熱材や自動車を中心に幅広く使用されており、堅調な伸びが続いている。今後もグローバルな経済成長に連動して、市場は堅調な伸びが予想される。

非フォーム製品は、衣料で採用されるスパンデックスや、自動車向けで好調な熱可塑性ポリウレタンなどの伸びが大きく、フォーム製品以上の高成長が期待される。市場規模の大きいウレタン系塗料やウレタン系接着剤などが堅調な需要により市場拡大をけん引するとみられる。

◆注目市場

●硬質ウレタンフォーム、軟質ウレタンフォーム

硬質ウレタンフォーム、軟質ウレタンフォーム市場規模

硬質ウレタンフォームは、グローバルな省エネ意識の高まりや、高断熱住宅への政策支援による断熱材の使用増加、また、使用される断熱材の厚みが増していることもあり、今後も市場拡大が続くとみられる。軟質ウレタンフォームは、自動車生産台数の増加、中国や欧米でのインテリアや寝具、日用品・包装などの旺盛な需要、また、新興国の需要も伸びが期待されるため、市場は堅調な拡大が予想される。

エリア別では、中国が最大の需要地である。特に冷蔵庫の販売増加により、断熱材として使用される硬質ウレタンフォームの需要が増えている。日本では自動車生産の低迷や、住宅着工件数の減少に伴う建築物の断熱材、また、家具や寝具の需要減により市場は低調である。欧米は市場が成熟しているが、断熱性能を高める省エネ対策の進展により需要は堅調である。

●熱可塑性ポリウレタン(TPU)

熱可塑性ポリウレタン(TPU)市場規模

2024年は日本や中国、欧州の一部などで自動車生産台数が低迷したため影響を受けたが、工業部品や靴材をはじめ日用品、ペイント保護フィルムなどで旺盛な需要が続いたことから、市場は拡大した。2025年以降も各国の経済成長による日用品需要の増加や自動車生産台数に伴い、順調な市場拡大が予想される。

中国が需要の6割以上を占める。雑貨や塗装保護フィルム、家電・OA機器、電線ケーブルなど幅広い用途で需要が増えている。一方、各メーカーによる積極的な生産能力拡充が進んでいるため、供給過剰や過当競争による販売価格への影響が懸念されている。日本では、半導体製造装置向けを含む産業用チューブやホース類、食品や物流関連のベルトなどが主要用途である。2024年は消費財に使用される汎用ベルト、フィルムなどの需要が好調だった一方で、自動車関連や産業用途は低迷した。2025年以降は自動車生産台数の回復や半導体製造装置向けの設備投資拡大などにより伸びが期待される。欧州では中国で生産され余剰となった低価格TPUの採用が広がっており、現地メーカーは高機能品を中心に差別化を図るなどの動きがみられる。

用途としては、耐候性、耐油性、耐摩耗性に優れているため、ギアノブやグリップなどの工業部品や自動車部品、また、衣類用やスパイクやハイヒール、安全靴などの靴材、道路の走行分離ポール・コーンなど、幅広く使用されている。

自動車部品ではグリップやシフトレバーのように独特な触感が要求される部品で採用されている。近年は自動車保護や意匠性向上の観点から、高級車やEV向けで塗装保護フィルムの使用が拡大している。中国で特に需要が増えており高耐熱グレードなどの開発も含め、塗装保護フィルム向けの採用増加が今後の市場拡大をけん引するとみられる。また、電線被覆材として、電力・通信ケーブルやロボットケーブル、産業用ケーブルなどで、医療分野では透析用チューブや動脈・静脈、心臓用チューブなどでも使用されている。近年は半導体分野の盛況によって半導体製造装置用空圧チューブでの採用も増えている。

◆調査対象

ポリオール

・ポリプロピレングリコール(PPG)
・ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)
・ポリエステルポリオール(PEP)
・ポリカプロラクトンポリオール(PCL)
・ポリカーボネートジオール(PCD)
・ポリブタジエンポリオール(PBP)
・ひまし油由来ポリオール
・バイオマス由来ポリオール
・CO2由来ポリオール

イソシアネート

・ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)
・トルエンジイソシアネート(TDI)
・ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)
・イソホロンジイソシアネート(IPDI)
・水添ジフェニルメタンジイソシアネート(H12MDI)
・キシリレンジイソシアネート(XDI)
・水添キシリレンジイソシアネート(H6XDI)
・トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)
・1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)
・1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)
・CO2由来イソシアネート

ポリオール原料

・1,4-ブタンジオール(BDO)
・1,6-ヘキサンジオール(HDO)
・ネオペンチルグリコール(NPG)
・トリメチロールプロパン(TMP)
・3-メチル-1,5-ペンタンジオール(MPD)
・1,9-ノナンジオール(ND)

イソシアネート原料

・ヘキサメチレンジアミン(HMDA)
・イソホロンジアミン(IPDA)
・メタキシリレンジアミン(MXDA)

触媒・添加剤

・アミン触媒
・発泡剤
・シリコーン整泡剤
・難燃剤
・硬化剤

中間製品

・ポリウレタンディスパージョン(PUD)
・ウレタンアクリレート

ウレタン応用製品

・硬質ウレタンフォーム
・軟質ウレタンフォーム
・スパンデックス
・熱可塑性ポリウレタン(TPU)
・熱硬化性ウレタン(TSU)
・ウレタン系塗料
・グラビアインキ
・ウレタン系接着剤
・ウレタン系シーリング材
・合成皮革
・人工皮革
・ウレタンビーズ
・電子基板用注型剤


2025/6/26
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