PRESSRELEASE プレスリリース

第25067号

航空機や自動車などに使用される
炭素繊維複合材料(CFRP/CFRTP)の世界市場を調査
― 2050年予測(2024年比) ―
■炭素繊維複合材料(CFRP/CFRTP)の世界市場 8兆6,864億円(2.6倍)
CFRPは航空機や風力発電ブレード、CFRTPは自動車(バッテリーボックス等)で採用進む
●CFRP/CFRTP成形加工装置 422億円(2.3倍)
CFRPはオートクレーブやRTM装置、CFRTPは射出成形機が大きく伸びる

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、軽量、高強度、高剛性といった特徴によって航空機や自動車、風力発電ブレードなど幅広い分野で使われるほか、リサイクルの取り組みも増え、さらに用途が広がる炭素繊維複合材料(CFRP/CFRTP)の世界市場を調査した。その結果を「炭素繊維複合材料(CFRP/CFRTP)関連技術・用途市場の展望 2025」にまとめた。

この調査では、16用途別に炭素繊維複合材料(CFRP/CFRTP)市場の現状を明らかにし、将来を展望した。また、炭素繊維複合材料(CFRP/CFRTP)とそれを構成する部材や関連装置の市場、炭素繊維複合材料の競合となる注目材料の市場についても整理した。

◆調査結果の概要

■炭素繊維複合材料(CFRP/CFRTP)の世界市場

炭素繊維複合材料(CFRP/CFRTP)の世界市場

炭素繊維に熱硬化性樹脂を染み込ませた製造品であるCFRPと、熱可塑性樹脂を染み込ませた製造品であるCFRTPを対象とする。どちらも軽量、高強度、高剛性といった特徴を持つ。現状はCFRPが大部分を占めるが、CFRTPはCFRPの課題である製造加工時間を大幅に短縮できるほか、加熱すると軟化し冷却すると硬化するため、リサイクル性も高い。

2024年は、航空機用途の大幅な伸びや、中国を中心としたEVでの採用拡大、また風力発電ブレードの製造増加やスポーツ・レジャー用品向けの伸びなどによってCFRP市場が大幅に拡大した。2025年も、航空機や風力発電ブレード、スポーツ・レジャー用品向けなどを中心にCFRPが伸長するとみられる。

CFRTPはまだ市場は小さいものの、電機電子向けや自動車などの生産ラインで使用される摺動部品・静電部品向け、航空機向けが堅調である。

2050年に向けて、CFRPは航空機や風力発電ブレードなどを軸に採用が増えると予想される。また、圧力容器、スポーツ・レジャー用品での需要も増加するとみられる。CFRTPは自動車のホイールやバッテリーボックスなどで普及するとみられ、今後も市場は拡大を続けると予想される。

■注目用途別

注目用途別

自動車は、現状は中国でのEV増産に伴うバッテリーボックスでの採用が中心である。また、ホイールでの採用も一部みられ、今後の採用増加が期待される。ホイールについては、サスペンションで支える部位の重量である「ばね上重量」に比べサスペンションよりも下の部位の重量である「ばね下重量」の方が、軽量化による効果が大きいため、炭素繊維複合材料を用いる動きが増えている。ボディについては安価な鉄鋼やアルミ二ウムを中心とする開発・設計が主流であるため、現状では一部の採用にとどまっている。

長期的にはホイールとバッテリーボックスでの採用が進むことによって、2050年の市場は2024年比3.2倍が予測される。

なお、欧州では「ELV指令」の改正案において、廃棄時に微細繊維が発生するため電気機器のショートや人体への影響などを考慮して、炭素繊維を有害物質に追加することが検討されている。しかし、今後の自動車での炭素繊維複合材料の採用は、ホイールやバッテリーボックスが中心であり廃棄時の分離が容易であるために検討内容が実施されても影響は小さいとみられる。


航空機では、構造材や内装材など広く使用されている。2024年は一部主要メーカーの生産調整があったものの、新型コロナの流行が落ち着き、人流が増加したことで航空機の需要が回復に向かったため、市場拡大が続いた。2025年の市場も主要メーカーの増産に伴って拡大するとみられる。

中長期的には、旅行者の増加が予想される中国や新興国で、シングルアイル機やリージョナルジェットの需要が高まり、炭素繊維複合材料の採用も増加するとみられる。シングルアイル機やリージョナルジェットは、大型機に比べ短い期間で生産できるほか、RTMやラミネートプレスなどの成形技術の確立によって炭素繊維複合材料の採用率上昇が期待でき、2050年に向けて市場は堅調な推移が予想される。


圧力容器は、強化材に炭素繊維複合材料を使用したタンクを対象とする。車載用天然ガス圧力容器や燃料電池車の水素タンク、水素ステーションの高圧水素タンク、車載用/輸送用CNGタンクなどに使用される。

2025年は米国やインド、中国で導入が多いCNG車の販売が、CO2排出量削減のトレンドを背景に増加し、CNGタンクの需要が高まるため市場拡大が予想される。

中長期的には、バッテリーコストの高さや航続距離確保の観点からディーゼルエンジンのトラックやバスなどが、EVではなくFCVやCNG車に代わる可能性が高いため、市場拡大に繋がるとみられる。また、フォークリフトやドローン、鉄道車両、船舶、航空機などにおいて燃料電池動力の採用を目指す取り組みが増えており、自動車以外でも水素タンクの需要が伸びることで、2050年の市場は2024年比4.2倍が予測される。


◆注目部材・装置

●リサイクル炭素繊維・端材利用CFRP/CFRTP

リサイクル炭素繊維・端材利用CFRP/CFRTP

CFRPの加工端材のリサイクルが中心である。特に、航空機や自動車の大型部品で用いられるオートクレーブやRTMなどの成形技術では端材発生量が多く、ICトレーなどの静電対策部品やスポーツ・レジャー用品、自動車の内装部品や構造材、石油・ガス搬送用における海中パイプ向け、マンホールの蓋や公園のベンチなど様々な用途で利用されている。それに伴い、端材の安定調達を目的に、炭素繊維メーカーによる炭素繊維リサイクル技術を持つ企業の買収が活発化している。

炭素繊維複合材料の普及とサーキュラーエコノミーの浸透を背景に、炭素繊維のリサイクル時の解体容易性やLCA(ライフサイクルアセスメント)評価を重要視する機運が高まっており、今後、リサイクルや端材活用への投資が増加するとみられる。特に、熱可塑性を有するCFRTPの加工端材の再利用増加が市場拡大に繋がると予想される。

●CFRP/CFRTP成形加工装置

CFRP/CFRTP成形加工装置

CFRPおよびCFRTPを成形加工する装置を対象とする。

風力ブレードの製造増加や航空機メーカーの増産に伴う炭素繊維複合材料の採用増加により、成形加工装置の需要が高まっている。CFRP用は用途によって異なるが、樹脂注入器やF/W装置の構成比が大きい。CFRTP用では射出成形機が大部分を占める。また、軸受やギア部品を始めとする摺動部品、ATMや券売機などに用いる静電部品に加え、端材を使った自動車向けCFRTP射出成形品の需要が伸びている。

今後は、CFRP用は航空機の増産を背景に、オートクレーブやRTM装置が伸びるとみられる。CFRTP用は中国において国家的に自動車の軽量化を目指す動きが加速しており、自動車用途の成形加工品で使用されるプレス機などが伸びるとみられる。また、射出成形機が摺動部品、静電部品向けで、続伸が予想される。さらに、炭素繊維複合材料のリサイクル材の活用が増え、リサイクル材や端材の加工に向いているLFT-Dの導入が進むと予想される。

◆調査対象

キーマテリアル/関連部材・装置
・PAN系炭素繊維(レギュラートウ、ラージトウ)
・マトリクス樹脂
・中間基材(プリプレグ、ペレット/シート、ラミネート)
・CFRP
・CFRTP
・接着剤
・工程紙・フィルム
・リサイクル炭素繊維・端材利用CFRP/CFRTP
・自動積層装置
・TFP(Tailored Fiber Placement)装置
・CFRP/CFRTP成形加工装置
・非破壊検査装置

用途別
・自動車(車両骨格・構造部品/外板・外装部品他)
・航空機
・圧力容器(高圧水素タンク/CNGタンク)
・風力発電ブレード
・建築・土木
・送電線芯材
・スポーツ・レジャー
・摺動部品・静電部品
・船舶
・油田掘削・搬送/CCS向けCO2搬送
・ドローン
・家電・OA製品
・鉄道車両
・医療機器
・治具
・空飛ぶクルマ・フライングカー(eVTOLなど)

注目競合材料市場
・連続繊維GFRP/GFRTP(ガラス繊維複合材料(連続繊維))
・天然繊維複合材料
・ピッチ系炭素繊維
・C/Cコンポジット(炭素繊維強化炭素複合材料)

※下線は市場規模を算出していない


2025/7/8
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