PRESSRELEASE プレスリリース

第25070号

脱炭素ソリューションビジネスの国内市場をScope別に調査
― 2040年国内市場予測(2024年比) ―
■脱炭素ソリューション 9兆4,605億円(6.4倍)
カーボンニュートラル目標達成に向け、再エネ調達や環境価値調達を主体に市場が拡大
Scope3の算定・開示義務化でソリューション利用の裾野が広がる

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 社長 菊地 弘幸 03-3241-3470)は、Scope別の詳細なCO2排出量の把握や削減目標設定、削減案策定の必要性から、企業や産業向けのビジネスが広がっている脱炭素ソリューションビジネスの国内市場を調査した。その結果を「Scope別 脱炭素ソリューション市場の現状と将来展望 2025」にまとめた。

この調査では、脱炭素関連のサービス・ソリューションとしてScope横断ソリューション9品目、Scope1ソリューション7品目、Scope2ソリューション7品目、Scope3ソリューション3品目について最新の動向を調査し将来を展望した。また、製造業や運輸業をはじめとする10業種を対象に、CO2の排出量予測や脱炭素ソリューションの適合有望業種をまとめた。

◆調査結果の概要

■脱炭素ソリューションの国内市場(Scope別)

脱炭素ソリューションの国内市場(Scope別)

政府が表明する「2050年ネット・ゼロ」目標に向けたCO2排出量削減の取り組みが進み、2040年の市場は2024年比6.4倍の9兆4,605億円が予測される。市場をけん引するのは再エネ調達や環境価値証書などで各産業や企業の導入が進むとみられるScope2ソリューションや、既存の燃料からカーボンニュートラル燃料への置き換えが進むScope1ソリューションとみられる。

Scope横断ソリューションやScope3ソリューションの規模はまだ小さいが、今後Scope3の算定・開示が義務化される見通しであり、Scope横断ソリューションを展開する企業がScope3ソリューションの提案を強化していくとみられる。また、NDC(国別削減目標)の達成に向けては、森林経営活動や植林、再造林といった吸収・除去系ソリューションが不可欠であり、今後台頭してくると予想される。

全てのScopeに関連するScope横断ソリューションは、2025年時点ではCO2算定・可視化ツールや脱炭素コンサルティングサービスが主体である。今後、脱炭素コンサルティングサービスはサービス導入の一巡やユーザーのノウハウ蓄積で縮小するとみられる。それに伴って2020年代後半には市場の伸びも鈍化すると予想されるものの、2030年以降にCCUSソリューション(CO2分離・回収)が立ち上がることから、市場拡大に貢献するとみられる。

Scope1ソリューションは、バイオ由来燃料やe-Fuelなどの水素由来燃料を対象とするカーボンニュートラル液体燃料が市場の70%近くを占めており、今後も同様の傾向で推移すると予想される。バイオエタノールやバイオディーゼルの利用が先行しているほか、今後エアライン燃料のSAF(Sustainable Aviation Fuel)化が進むことでバイオジェット燃料市場が立ち上がり、利用が増えるとみられる。2030年以降はカーボンニュートラルアンモニアやカーボンニュートラル水素の市場も本格化し、2040年の市場は2024年の20倍以上に拡大すると予測される。

Scope2ソリューションは、再生可能エネルギーの調達や非化石証書の調達など、事業者が取り組みやすいソリューションが多く、中でもグリーン電力が約70%を占め、脱炭素ソリューション全体のけん引役となっている。グリーン電力には再エネ電力の直接購入のほか、環境価値証書(非化石証書、グリーン電力証書、J-クレジット)を活用したみなし供給を含む。2030年度や2035年度をグリーン電力導入目標の中間目標時点として掲げる企業が多いことから、それに向けて導入が進むと予想される。

Scope3ソリューションは、今後SSBJ(サスティナビリティ基準委員会)の策定に伴ってScope3の算定・開示が義務化されることで参入企業による活発な提案が期待される。Scope3は対象がサプライチェーンの上流から下流までにわたり、個別企業が単独でCO2排出量を算定することは困難であることから、今後各ソリューションのニーズは大きく伸びるとみられる。

【CO2の必要削減量に対する脱炭素ソリューションの貢献度】

NDC基準年度である2013年の排出量と目標値の差分を必要削減量と定義し、これに対して調査対象の脱炭素ソリューション導入がどの程度貢献するのかをまとめた。2024年度の脱炭素ソリューションによる削減量は必要削減量の約13%であった。Scope2に含まれる再エネ調達や環境価値調達からソリューションの導入が進み、2040年の貢献度は約26%になるとみられる。

◆注目市場

●輸送・配送時CO2排出量可視化支援サービス【Scope3】

輸送・配送時CO2排出量可視化支援サービス【Scope3】

主に物流の効率化目的で導入される物流管理システムに付帯する機能として導入される。市場は初期導入費用、年間利用料で捉えた。倉庫外やラストワンマイルのDX化を進めている大手企業が主なユーザーであり、現状年間60社から70社が新規導入している。

輸送能力不足などの物流の2024年問題によって、輸送・配送におけるコスト削減ニーズが急速に高まるなか、効率的な配送オペレーション構築のニーズが高まっている。本サービスは車両や物品の位置を把握・管理するとともにCO2の排出量を把握することが可能で、CO2排出量の削減とオペレーション構築が同時に実現することはコスト削減に直結するため、事業者にとっては導入メリットが大きく今後の伸びが期待される。

2025年以降、大手企業から導入が進み、今後は年間70社から100社の導入が予想される。2030年以降は大手企業への導入が一巡し、中小企業への導入へ移行することで成長率は鈍化するものの伸びが続き、2040年に向けて大幅な成長が予想される。

◆調査対象

Scope横断ソリューション
・CO2算定・可視化ツール
・脱炭素コンサルティングサービス
・CFP算定ツール*
・J-クレジット
・GX-ETS、その他カーボンクレジット*
・CO2/環境価値流通プラットフォーム*
・CCUSソリューション
・吸収・除去系CO2量推定関連サービス*
・建築物ライフサイクルCO2可視化支援サービス*

Scope1ソリューション
・カーボンニュートラル水素
・カーボンニュートラルアンモニア
・カーボンニュートラル液体燃料
・カーボンオフセット都市ガス
・カーボンオフセットLPG
・燃料転換サービス
・EVパッケージサービス

Scope2ソリューション
・グリーン電力
・太陽光発電PPA
・デマンドレスポンスサービス
・再エネアグリゲーションサービス
・ESP・オンサイトエネルギーサービス
・非化石証書
・グリーン電力証書

Scope3ソリューション
・輸送・配送時CO2排出量可視化支援サービス
・廃棄物CO2排出量可視化支援サービス
・調達時CO2排出量可視化支援サービス*

業種
・電気業
・ガス業
・製造業(鉄鋼業)
・製造業(化学工業)
・製造業(自動車製造業)
・製造業(電機・電子産業)
・製造業(食品飲料製造業)
・建設業
・運輸業
・卸売業、小売業

*付きの品目は市場を算出していないため、合計に含まれない

サプライチェーン排出量、Scopeについて
原料調達から製造、物流、販売、廃棄に至る一連の流れで発生する温室効果ガス(GHG)の排出量をサプライチェーン排出量と呼び、どの部分で排出されたかによって、Scope1、2、3に分類される。またScope3はより細かい15のカテゴリに細分化される。Scopeの分類と主な排出活動例は下記の通りである。

サプライチェーン排出量、Scopeについて


2025/7/11
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